このページでは、SharePointOnlineへのデータ移行で非常に注視すべき”スロットリング”についてまとめます。
このスロットリング、どうやら2023年10月ごろから仕様変更があり、今まで可能だったことができなくなる可能性があります。2023年9月以前にSharePointデータ移行を実施したことがある方も今一度ご確認いただくとよいと思います。
スロットリングとは何か。
まず、”スロットリング”とは何かについて説明します。※必要ない方は飛ばしてください。
スロットリングはスロットルという名詞の動詞形ですね。
一般的にスロットルとは、流体を制御する機構のことを指します。飛行機でスロットルといえば、燃料を調整して推進力を調整する仕組みのことを指します。
スロットル(英: throttle)は流体を制御する機構のひとつで、流路断面積を変化させて流量を制御する装置である。主要な構成部品である弁(バルブ)はスロットルバルブ(英: throttle valve)あるいは絞り弁と呼ばれ、弁を操作するための構造はスロットルレバー(英: throttle lever)、スロットルペダル(英: throttle pedal)、ガスペダル(米: gas pedal)、スロットルグリップ(英: throttle grip)などのように呼ばれる。あるいは操作部を指してスロットルと略称する場合もある。
ウィキペディア:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AB
データ移行におけるスロットリングとは、”移行先サーバ側に流入する移行データ量を調整する”ことと表現できます。
では、流入するデータ量が増えていくとサーバはどうなってしまうのでしょうか。考えてみましょう。
通信するシステムサービスの速度(画面表示速度やデータアップロード、ダウンロード速度など)は、サーバの処理性能が変化しないとするならば、通信される情報の量に左右される原因の一つとなります。
接続数やセッション数などほかにもいろいろ要素がありますが、ここでは考慮しないで考えます。
サーバで処理できるデータ量が通信されるデータ量よりも多ければ、ユーザーは問題なくサービスを利用することが可能です。しかし、通信されるデータ量がサーバで処理できる量を超え始めると、処理が追い付かず、ユーザーには画面表示が遅くなるなどの利用しずらい状況が発生します。さらに、通信するデータ量が増えると、最悪の場合、まったく画面が表示されないなどのサービス停止状態に追い込まれる可能性があります。
これを利用したサイバー攻撃がDDos攻撃ですね。
さて、一般論として、通信するデータ量がサーバの処理性能を超えると問題が発生することは理解いただけたかなと思います。
続いて、SharePointOnlineについて考えてみましょう。
SharePointOnlineとは、Microsoftが提供するオンラインのファイル共有サービス(クラウドストレージ)になります。ユーザーは、SharePointにファイルを保存したり、保存したファイルを誰かと共有して共同編集したりすることができます。
SharePointOnlineの詳しい解説は別投稿で行いたいと思います。
SharePointOnlineはクラウドサービスなので利用者はサーバの所在について気にすることではありません。が、本質的に言えば、Microsoftが所有しているサーバ上で動くシステムに他なりません。
また、SharePointOnlineはMicrosoft365のグループウェアとして提供されていますので、日本中のMicrosoft365ユーザーがアクセスするわけです。(もちろんアクセス分散などされているでしょうが、会社のサーバとはその通信規模や負荷はけた違いのものでしょう。)
平日日中帯は、ビジネス市場が開始するため、特にユーザーアクセスによる通信量が多いです。そこに、データ移行として大量のデータを流した場合、前章で説明したサーバの負荷がおこり、サービスレベルの低下やサービスの一時停止に追い込まれる可能性があります。
これを避けるために、Microsoftは平日日中帯のデータ移行ツールを用いた大量のデータ移行にスロットリングを行い、サービスレベルの維持を行っているというわけです。
スロットリングに気を付けて
このスロットリングですが、非常に強力な制御力があります。
Microsoftが2023年8月に新しく公開した情報に、以下の記載があります。
平日の昼間にバックグラウンド アプリ (移行、DLP、バックアップ ソリューション) に対して、より厳しい調整制限を実装しました。 これらのアプリのスループットは、これらの期間では非常に制限されています。
Microsoft|全般的な移行パフォーマンス ガイダンス
非常に制限されるとは言っても、多少は流れるんでしょ?
「流れない可能性が高いです!」とだけお伝えしたいです。
私が過去に携わった案件では、月曜日の9:00~20:00でほとんどデータが移行されなかったという実績があります。
少ないサンプルなので、平日日中帯にデータ移行を検討されている方は、十分なリハーサルを実施いただきたく思います。おそらく、データ移行されないと思います。
ExchangeOnlineでもスロットリングあるので、Microsoftに依頼すれば緩和してもらえるのでは?と思っている方。残念ですが、SharePointでのスロットリングは緩和していただけません。
Microsoft は、移行に役立つスロットルをオフにできますか?いいえ。 調整は、サービスの信頼性と可用性を保護するために実施されています。 スロットルのルールを無効にしたり、一時停止したりすることはできません。 サポート チケットを開いても、スロットルは上がりません。
Microsoft|全般的な移行パフォーマンス ガイダンス
同公開情報の下方には念押しで、以下も書かれています。
質問: 移行しようとすると、いつもスロットルが発生します。 スムーズに移行できるように、Microsoft の側でスロットルをオフにできませんか。
回答: サービスの信頼性と可用性を保護するために、スロットルが行われます。 調整ルールを無効にしたり、停止したりすることはできません。サポート チケットを開いても、調整は解除されません。 詳細については、「 SharePoint で調整またはブロックされないように する」を参照してください。
Microsoft|全般的な移行パフォーマンス ガイダンス
Microsoftにスロットリングについて公開情報以上に詳細な仕様を問い合わせてみましたが、セキュリティ観点から教えていただくことはできませんでした。(そりゃそうですよね。)
Microsoftの仕様の中で、データ移行を検討しましょう
SharePointへのデータ移行に関するスロットリングについてまとめさせていただきました。
- 2023年10月ごろからスロットリングの制限がより強くMicrosoftで設定されました。
- この制限により、平日の日中帯(経験上では、9:00~20:00ごろ)にツールを利用しようとしてもデータ送信は非常に低速となります。ほとんど移行されないと思ってよいと思います。
- 2023年10月時点では、Microsoftへのスロットリング緩和の依頼はできず、詳細な仕様(具体的なスロットリングの開始終了時刻など)もわかりません。
- Microsoftの仕様に合わせデータ移行するチームは、プランを練る必要があります。
同じデータ移行を行うエンジニアの方々が、データ移行がうまくいかないなどのトラブルに巻き込まれないことを祈ります。
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